売買契約書

最も多くの人に関わりのある契約書といえば、「売買契約書」です。今回は、この売買契約書の解説をさせていただきます!

(ひな形は下記からダウンロードしてご利用ください。)

 

 

売買契約とは、皆さんがイメージする通り、当事者の一方が物の権利を相手方に移し、もう一方がお金を払う約束をすることです。「物の権利」という表現の仕方をしましたが、これは、不動産でも動産でも債権でも構いません。また、所有権でも地上権でも質権でも売買契約は成立します。

ただ今回については、一番需要があると思われる動産の所有権についての売買(知り合いに服を売ったりする契約)をイメージしてお話しをしていきます。(土地や建物の不動産については、より金額も大きい重要な契約になりますし、登記などの規定も含めることが望ましいので、今回はこれを含みません。)

 

さて、売買契約は、口頭のみで成立します。実際、コンビニでガムを買うときにいちいち契約書にサインをすることはありませんよね。ちなみに、レシートはお金を払ったことの証明のためで、売買契約書そのものではありません。金額の小さな契約でいちいちそれぞれの契約に合わせた契約書を用意していては面倒です。ただ、このような場合でも民法(や消費者契約法 )で規定されている原則が適用されるので、何か問題があったときでも特段の問題はないということになります。

 

では、どのようなときに売買契約書を作成するべきなのでしょうか。

これは、やはり売買金額の額が大きいときや契約が重要・複雑なときだと思います。訴訟になったときの証拠の意味合いももちろんあるかもしれませんが、その前段階として、紛争予防の役割もあることを忘れてはいけません。契約書があることで、「お互い決めた約束をしっかり守りましょう。」という意識が強まり、より契約が履行されやすくなりますからね。

 

では、売買契約書のポイントをいくつかご紹介します。

・(目的)

契約を結ぶ目的をきちんと定めます。この契約が売買契約を指すものだとの認識が一致させるためです。

簡単な契約書でも良い場合、売買の目的物についても一緒に書いてしまってよいでしょう。売買の目的物の認識を一致させることも当然、大切なことです。

もし売買の対象が多かったり、複雑だったりした場合は、目的物の記載を別の条項に移してもよいですし、別紙の通りとして契約書の後ろに別紙をくっつける形式でも構いません。

 

・(売買代金)

お金のことについては特に問題が起きやすい部分でもありますし、契約の内容をきちんと反映させることが望ましいです。

 

(代金の支払時期・支払方法)

これも同様です。支払方法についても、適宜合意内容を記載してください。(○○銀行の○○の口座に支払うなど。)



・(所有権の移転時期)
所有権とは、物を所有する権利です。このコラムをお読みになる方々が行う売買契約の対象となるのは大抵所有権だと思います。

所有権について、民法では、契約と同時に買主に移転するものとされています。つまり、所有権の移転時期について契約で特段の定めをしなければ、「所有権は買主に移ったのに、代金がまだ支払われない。」といった可能性があるわけです。売主サイドとしてはせめて、所有権の移転時期と売買代金の支払時期を同時にする条項を入れておきたいところです。

 

・(協議)

何かあったときに協議をするのは当たり前ですし、絶対に必要かといわれるとそうでもないのですが、入っていることが多い条項です。

「契約を気持ちよく履行しましょう。」というお互いの心構えを示す意味合いもあると思うので、今回はこの条項を含めています。条項の少ない簡単な契約書だからこそという面もありますし、あえて消す意味も特にないですしね。

 

本当に簡単な売買契約書でよいのであれば、以上を記載しておけば、契約書としての最低限の役割は果たせるかと思います。

他に契約として定めたほうが良いことは以下の通りです。

 

・(危険負担)

危険負担とは、契約締結後、売主の責めに帰すことができない理由(例えば自然災害など)により目的物が壊れてしまったような場合に、その負担を売主と買主のどちらが負うのかという問題です。

危険負担について、民法では、目的物が特定物されているときは、契約後は原則として買主がすべて負担するものとされています。ただ、これは契約と同時に所有権が移転することを想定されているので、現実の世界では、「自然災害で目的物がなくなって受け取っていないのに、お金は払わなければならない。」といった事態が考えられるのです。買主サイドとしてはせめて、所有権の移転と同時とする条項を設けたいところです。

(例)危険負担は本物品の所有権が甲から乙に移転した時に買主に移転する。



・(物品の引渡し時期・引渡し場所)

目的物の引渡し=所有権の移転ということではありませんので注意が必要です。(物を占有する権利というのもありますので、引渡し後も所有権は売主のもとにあるということも考えられます。)

基本的には、目的物の引渡し、代金の支払い、所有権の移転、危険負担の移転を同時にするのがフェアといえます。ただ、現実問題としてそれができない場合もありますので、当事者間でしっかりと話し合い、双方納得の上でその旨を契約書に落とし込みましょう。

(例)甲は、乙の代金の支払いと同時に、目的物を引き渡す。

 

(契約の解除)

民法にも、相手方が約束を守らなかったときなどに契約を解除できる旨が規定されているのですが、これ以外のやむを得ない理由により契約を解除したいときに、契約書に書いておけば、その方式に従い契約内容を変更することができます。

(例)甲または乙は、相手方に○○(例えば暴力団など)に該当する事由があるときは、何らの催告なしに本契約を解除することができる。

・(目的物の基準)(検査)

目的物について、最低限の基準やその検査方法などを定めておいた方が良い場合も考えられます。ただ、今回想定している簡単な売買のケースでは少ないと思いますので、ここでは割愛します。

 

・(秘密保持条項)

取引の中で大事な情報がある場合にその秘密情報をどう扱うか、漏洩した際はどうするかについて定める条項です。企業同士のやり取りでもない限りそこまで大事な情報はないとは思いますので、ここでは割愛します。



なお、継続的な売買を前提とした基本契約書には収入印紙を貼らなければならない場合がありますが、今回のように一回きりの契約についての契約書でしたら必要ありません。


今回は以上になります。基本的に契約書の記載方法に制限はないので、契約の内容を落とし込むようにしましょう。ただ、他の条項との関係は大事です。矛盾した条項がいくつかあっては争いのもとですからね。きちんと全体で整合性をとることに注意しましょう。

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